予防と健康レポート
1 はじめに
今回のレポートをかくにあたって、3本のビデオを見させていただいたが、私はそのうち「ストレス」のビデオに興味を抱いたのでその中のキーワードとなっている「過重労働」「メンタルヘルス」というキーワードを選んで論文を読み考察した。
2 論文要約
過重労働とメンタルヘルス対策 黒木宣夫
1998年よりわが国の自殺者総数は3万人を突破した状態が続いており、特に中高年男性の自殺者の増加は、男性全体の今までの平均寿命を引き下げられるほどの影響を与え、深刻な社会問題としてうけとめられている。この背景には近年のめざましい科学技術の確信、終身雇用制の崩壊、製造業の外注化、分社化、就業形態の多様化、成果主義導入、さらにリストラに伴う早期退職者の増加など就業者を取り巻くストレスは多様化し、企業の統廃合・倒産が続発する中で完全失業率の増加等が中高年層を直撃している。そして企業は効率化を求めるため職場の人員を増やさず業務量は増大する中で、結果的に長時間労働者も増加し、過重労働による健康被害が深刻化している。現在までの精神疾患の労災補償状況について、1983年から2004年までの22年間に精神疾患に係る労災請求件数は2119件であり、平成16年度の請求件数は524件で、4分の1が認定されており、自殺の認定は45件であった。最近の労災請求の特徴は精神障害請求件数が一直線上に急増しており、自殺請求件数を大きく上回っている点があるが、01年度から業務上認定に関して精神疾患認定件数が自殺認定件数を逆転している。過労自殺として認定された自殺事業の調査を実施した。対象事案の53%に100時間以上の時間外労働が見られたが、100時間以上の過労自殺者は、睡眠6時間確保が困難な事例と推測できる。管理職と専門技術職の両者で全体の74%を占めた。出来事から発病までの期間に関して、全体の6割が3ヶ月以内の発症であった。そのうちの16例は100時間以上の時間外労働をしていた。発病から死亡までの期間は3ヶ月以内に71%が自死に至っていた。そのうちの52%が100時間以上の時間外労働をしていた。出来事から6ヶ月以内の自死に至っていたものは63%あり、その中で100時間以上の時間外労働に従事していた労働者は59%であった。診療科を受診していないものは全体の67%、精神科受信した事例は2割に過ぎなかった。ノルマの未達成が関与して業務上と認定された事例は61%であった。年齢が30〜59歳が86%を占めていた。縊死が圧倒的に多く55%、次に飛び降り・投身が18%であった。重症度に関わらず「うつ病エピソード」が92%を占めた。時間外労働と精神疾患発症との関連に関して、100時間以上の長時間残業を行って方が99時間以内残業と比較して早く発病し、自死に至るという結果が得られた。また、全事例の82%が会社よりも家族が先に自殺の兆候に気づいていた。その特徴は食欲不振、第十減少、倦怠感、頭痛などの身体症状、また早期覚醒等の睡眠障害などが最も多く気づかれた言動の36%を占めていた。会社が家族よりも先に気づくケースもあるが会社は労働者の業務が過剰であることは認識しているものの労働者の疲労や業務遂行課程に支障をきたしていることまではわからなかったようである。こういった状況を行政は@セルフケアAラインによるケアB事業場内産業保険スタッフ等によるケアC事業場外資源によるケアの4つのケアにより心の健康づくりをすすめることを基本にし、自殺を予防するためにはうつ状態に早期に対応する必要があること、家族によるケアも重要で家族が相談する窓口を明確にすること、労働者の意見を汲み上げながら労使、産業医、衛生管理者等で公正される衛生委員会等を活用した労使の自主的取り組みが重要であることが強調された。2003年6月には第十次労働災害防止計画で過労自殺が労働災害として位置づけられ、企業の管理責任が問われる訴訟や長期休業者の増加、精神障害者雇用の問題など、今後、わが国で解決しなければならない産業精神保健をめぐる問題は山積みしている。過重労働から睡眠時間の確保が困難となり、消耗した状態では、うつ病発症の大きな要因となり、自死に至ることもあり得ることに注意するとともに、最低限7〜8時間の睡眠を確保することがその予防につながることを認識する必要がある。
産業メンタルヘルスに対する精神科 医療機関の取り組みの現状と今後の課題
臼井卓士 崎山忍
近年、労働者の心の問題の一層の増加が懸念され、心の問題の専門機関としての精神化医療機関の役割が期待されている。平成12年に労働省(現在の厚生労働省)が公表した「職場における労働者の心の健康づくりのための指針」によると、事業者のメンタルヘルスケアは事業場外の精神科医療機関によるサービスを活用していくことが期待されている。しかし、産業メンタルヘルスに対する精神医療機関の取り組みや、事業場との連携がどのような状況なのか調査を行った。産業メンタルヘルスに対する取り組みは「上司との情報交換」が最も多く、ついで「産業スタッフの連携」となっている重複回答を排すると64%の医療機関において何らかの取り組みが行われていた。診察した就労者の精神疾患の内訳は気分障害が最も多く、統合失調症が続いた。今後新たに予定している産業メンタルヘルスに対する取り組みは「特になし」が最も多くかった。就労者の診察に際して行った、事業場に対する職場環境の西部や社会復帰への具体的な方法についてのアドバイスに関して「行った」が全体で53%であった。ついで、事業場が社会復帰に消極的であるという回答が44%であった。なお、就労者の解雇のための作業に協力を求められるといった回答も見られた。患者の復職時、診断で「復職可」とされたにもかかわらず、現実には職場復帰できない事例に関して「治療者が診察室における状態像で判断しており、職場の状況まで判断材料に含めていない」という回答が全体の61%「職場の嫌がらせなどの職場環境の未整備が原因で再燃することが多い」が37%から得られた。今回の調査結果から、6割以上の精神科医療機関が産業メンタルヘルスに対し診療以外の取り組みを行っており比較的関心が高い領域であることが窺えた。一方、今後新たな取り組みを予定している医療機関は31%にとどまった。また、医療機関が事業所側が患者の復職に対して消極的、復職システムがないことを根拠に事業場から復職への協力が得られない、場合によっては解雇作業に協力を求められていると感じているといった回答も存在した。医療機関はこれから労働者の復職などに関し、事業場からの協力が得にくいなど連携に困難を感じていた。kれは、精神科主治医が専門性に基づいて職場の環境も踏まえた現実的な就労能力などの判断を行っていく際の課題となると考えられた。また、精神障害に対する偏見が以前根強いことが明らかになり、精神障害の理解を深めるための啓発活動が重要であることも占められた。
考察
前半の文献は過重労働に関する文献、そして後半はメンタルヘルスに関する文献である。実際にこの文献を読むことにより、現在の労働問題と健康の関連を見出すことができる。特に、過重労働によるメンタル面でのケアが必須であることがはっきりと文献から読み取ることができる。特に、後半の文献から現代社会はまだまだメンタルに関するケアに対する理解が浅く、それが足かせとなって行政も医療機関側もケアを進めにくくなっている現状がある。しかし、これからは精神障害に対する理解を現代社会が理解を示し、会社がたとえそういった労働者が出たとしてもフォローできるように企業側が配慮する必要がある。
まとめ
実際にこのような文献を読んで思ったことは現代社会の労働者に対して企業側が冷たいことである。最近日本の企業一人当たりの生産性がアメリカの生産性の8割程度でしかないこともこのメンタルヘルスが関係しているのではないだろうか。最近は企業だけでなく医療機関に勤務する労働者にもこういったメンタルヘルスをケアするシステムを構築する必要があるのではないかと痛感した。